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桑田佳祐 LIVE TOUR 2021「BIG MOUTH, NO GUTS!!」- 名古屋公演

LUCID NOTE SHIBUYA

なんと!なんと!なんと!

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桑田さんのライブ・ツアー。九か所目の二日目、地方公演の最終日へ。東又兵ヱ町5丁目。

昨夜に引き続いて起死回生の敗者復活。満員御礼のガイシホールへちょっと早めにシットイン。おそらく年越しへの参加は現状では無理筋だろうから、今日が実質のラスト・コーナー、ラスト・ラウンド。これで今年の青春が終わると思うとさびしいけれど、ステージを目の前にしたらなりふり構っていられない。立ち止まらずに走り続けるのじゃ。

ひとつ一つの楽曲を丁寧に聴かせるための工夫、客が持つ想像力への信頼を基礎とした手法、他者への思いやりと遊びごころ、現実世界への配慮とあるいは少しの言いわけもあったのかもしれないが、今回のツアーでは、観客が必要以上に熱くならないように、絶妙で微妙なタイミングで熱冷ましのMCが頻繁に入る。桑田さんがライブ中に曲名を紹介をすること自体がめずらしいのだが、「それでは聴いてください、〇〇(曲名)。」は、本ツアーを開催できるに至った呪文のようなフレーズに聞こえてしょうがない。MCは演奏後の余韻に浸る間を短くし、ライブぜんたいの流れをブツ切りにするから、客の熱を冷まし、黙らせるには効果てきめんなのだ。

ただしそのぶん、曲中は音にどっぷりと浸れるようにと、ミュージシャンとしての技術と力量を惜しげもなく見せつけてくる。バンドメンバー各自のソロシーンはいつも以上に長く信頼できるものだったし、ダンサーの仕事っぷりにも注目しやるように視覚的な飛び道具の演出も控え目だった。いっきょく一曲を濃く、記憶に残るように、丹念に練り上げられた演奏と演出。その結果として、底抜けに明るい雰囲気や楽しい楽曲だけじゃなく、いまの社会に根付く歴史的な憂鬱さ、生きるための壮大なルールやモラル、郷愁や愛憎を原動力にしたドラマやストーリーなど、どれもこれもファンが望む桑田節が、何度も何度もここぞという急所にみごとに突き刺さってくる。ひげ男や王ヌーのようなペーペーたちのライブではぜったいに味わえない、ひとりのベテランのミュージシャンの世界観と人生観がぎっしりと詰め込まれた、まさにワン・ナイト・スタンド。こんなライブを六回も体験できたなんて。いやもう、楽しかったなあ・・・。

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ショーが終わると、人生は難しくなる。明日からどうしよう。