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矢野顕子さとがえるコンサート2020 NHKホール公演

LUCID NOTE SHIBUYA

正門の掲示板がいつのまにやら電光に。

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二十数年ぶりにNHKホールで矢野さんのうた声を聴く。神南2丁目。

矢野さんのコンサートを初めて体験したのはエレファントホテルの東京公演。会場は今日と同じNHKホール。ずいぶん前のことだからどんなステージだったのかほとんど思い出せないのだが、たっとひとつ強烈な印象として残っているシーンが記憶があって、それが「てぃんさぐぬ花」の間奏のパーカッションのソロ演奏(矢野さん本人ではない)。当時は昨今ほどカジュアルには見かけない、日本では珍しい遠い国の民俗楽器として分類(自分のなかでは)されていた打楽器を、アフリカ系のミュージシャンが自分の持ち場を離れてステージのあちこちを歩いて座って叩き、また立ち上がって歩いて座って叩くことを繰り返すスタイルで、聴くものの集中力を途切れさせずに長くソロ演奏を続ける、というシーンだ。この記憶は結果として、矢野さんは自分以外のメンバーをひたすらフィーチャーしてリスナーを魅了することを得意とするバンドリーダーであり、カバーソングを自分だけが表現できるアレンジでだれもが納得する楽曲に塗り替えることに長けたアレンジャー、という認識を以来ずっと自分のなかに保持させる要因のひとつになっているようだ。という視点で今日の公演を観ていると、当時と同じようなシーンを体験することに見事に成功してしまった。今回フィーチャーされたのはだれもが納得の佐橋さんのギター。佐橋さんファンには生唾モノのリフやアレンジが随所に。もちろん最後はリスナーの耳を矢野さんに回帰するように仕掛けてあるから、それもこれもぜんぶ矢野さんのステージ、ということになるのだが。

こんなふうに自分以外のだれかの仕事を自分のこと以上に大切にする人が発する、ステージ裏にいるスタッフたちの仕事への感謝の言葉には、チケット買って席に着いて拍手することくらいしかできない自分をもどかしく感じるくらいの説得力があって・・・。

LUCID NOTE SHIBUYA

おのずとその後の矢野さんのライブを選ぶときは必ずだれかとセットのときだけで、ソロのライブはいっさい体験していないのだが、(つづく)。