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スルメが丘は花の匂い – 東京公演 初日

LUCID NOTE SHIBUYA

夏休みこども劇場。ただし富裕層(の子ども)に限る。

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吉岡里帆さんの初主演の舞台の初日へ。千駄ヶ谷5丁目。

キー・ビジュアルにあるとおり、コメディ仕立てのストレート・プレイ。どんな内容でも笑える自信がある、どんな弾が飛んできても笑いで跳ね返す練習を日ごろからしている、なにがあってもとにかく笑える自分が好き、というひと向けの舞台。それ以外のひとは、したがって退屈な時間を過ごすことになる。

そういう演出なのか芝居のセンスなのかわからないけれど、顔の表情だけで間を埋めるシーンがたびたびあって、肝心のその顔が見えない席では舞台ぜんたいがフリーズしたように見えるわけで、きっとセリフが飛んだと不安をあおっておいて次のセリフでドッカンと楽しく笑わせてくれる、と期待を込めてこちらもフリーズしたまま待ってみるものの、そんな期待をした自分がバカだったと後悔すること数十回。間の取りかたやセリフのリズムが役者さんごとに違っていて、芝居ぜんたいのテンポがずっと安定しない。せっかく主役が熱い演技でフリを捲し立てたのに、解りづらい温度差とタイミングでボケを返す脇役、のようなセリフ回しの繰り返し。その繰り返しさえもリズムがバラバラで、、、とまるで、ずっと下手な芝居を観せられているような感覚。

ストーリーじたいにもオモシロ要素が見いだせない。そもそもファンタジーの世界なら不思議はあってあたりまえ。逆に仮にそれがリアルな世界で起こるのならおもしろいんだろうけれど。とりたてて意味深なセリフはないし、奇想天外でオドロキな展開もないし、社会に訴えるようなメッセージ性もないし、新しく知る蘊蓄もないし、一瞬で腑に落とすようなオチもないし、次回作を想わせる匂わせもない。夏休みの子ども向けにしてはチケット代が高額な、子どもだましのような一時間四十五分。

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これでスタンディング・オベーションかあ。儀礼だと思いたい。むしろ恥ずかしくて立てない。