あまりに近しいことで安心して油断して、しばらく放っておくと少しずつ何もかもが変わっていって、気づいたときはすべてがまったく別モノに変わっていた、という経験。
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久ぶりのナナカイ。スタッフ全員、知らない顔。円山町。
ピアノとギターの弾き語りデュオ、という表現は、どうやら彼らは不快で気に入らないらしい。間違ってはいないが、けっして正解ではないことは、今日のステージで一目瞭然。アンコール含めて全16曲。6曲目まではピアノとアコギで進行していたが、7曲目はピアノだけとなり、8曲目にはとうとうアカペラとなり、おもむろにヒートダウンしたところで、9曲目に一気にシフトチェンジ。ギターはエレキになり、鍵盤にはシンセが加わり、さらにマレットとフロアタムでリズムを刻み、13曲目ではルーパーまで踏みならす。前半とは全く違う音圧とアレンジの連続で、重厚で品格のあるダーキッシュな風景をリスナーに見せつける。ああ、これがあのハルカトミユキかぁ・・・。
勉強不足でまったく知らなかったのだが、今回のツアーでは、未発表曲を各地で1曲ずつ初披露してきたそうで、今日はそれらの楽曲をまとめてやってみる、とういライブだったそうだ。メジャーデビューからすでに5年を経た彼らが、これを実践したその意図は、最後のMCのひとことで、なんとなく理解できた。
アルバムを作って売ることをビジネスにしているメジャーのミュージシャンのライブは、発売したアルバムを売るための場として、「気に入ったら、アルバム買ってね」という誘い文句の暗喩として、開催されている。アルバムを作ることがままならない、それこそ持ち曲のほとんどが未制作、未発表のインディのミュージシャンのライブは、それらを披露する場として存在している。「気に入ったら、またライブに来てね」が常套句だ。インディでは、ライブに客が集まらなければアルバムはつくれないが、ライブは続けられる。メジャーでは、アルバムが先でライブは二の次。アルバムが売れなければ、そこですべてが終わる。ライブさえも簡単にはさせてもらえない。インディとメジャーは、ビジネスの順番も、ミュージシャンとしての心持ちも、すべてのベクトルが逆なのだ。
今回のハルカトミユキのおふたりが、未発表曲を各地で披露したのは、制作前にリスナーの反応を探りたかっただけではなく、結成当時の、インディのころの自分たちの心持ちをもう一度体験したかった、あるいは取り戻したかった、ということだったようだ。なんてわがままで、なんてややこしくて、なんて素敵なやつらなんだ。
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ま、インディだろうがメジャーだろうが、ライブだろうがアルバムだろうが、どっちが先でどっちが後でも、結局は楽曲次第、なんだけどね。