LUCID NOTE LUCID NOTE | Music show reports and Play stage reports

TOKYO MUSIC CRUISE 2022 – Day2

LUCID NOTE SHIBUYA

ロッキンが流れた。コロナと台風のダブルパンチ。

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おかげで今日はTMCの宿泊コース。芝公園4丁目。

会場はぜんぶで三つ。コロナと台風のせいで、ぜんぶの会場をひとつのフロアに集約させたそうで、並びのふた部屋と廊下をはさんで向かいのひと部屋に仮の壇上が設置されていた。廊下のどんづまりには関係者用の出入口が設けてあって、ステージ間を移動するオフタイムの廊下では関係者と観客が入り乱れることになる。関係者には出演者も含まれるから、気づくとさっきまでステージに立っていたひとが真横にいたりする。余裕のないタイテがそうさせたのか、ステージ下にいる出演者よりもステージ上できらめく出演者に興味を示す客のほうが多く、出待ち入待ちで廊下に客が滞留するシーンはいっさい見られない。客も出演者もホテルマンも、粛々と静かに、ほんの少しだけ足早に、常に目的意識を持って行動する空間。オトナのフェスだ。

落ち着いた雰囲気は演奏中にも漂っていて、ノッテいるのか、つまらないのか、隣席の客でさえ見分けがつかない。ホテルらしい高い天井と、パーソナル・スペースの確保を重視した間隔を広めにとった客席のせいか、いっさいの声出し禁止のなか、深い絨毯カーペットに吸収される客の拍手の音は、まばらに短く控え目に聞こえる。ステージとフロアの一体感をぜんたいで味合う大味なライブではなく、周囲に迷惑をかけいないよう、ひたすら目立たず、それでいてひとりひとりが思い思いの過ごしかたで音を楽しめるライブ。オトナのフェスだ。そんななか、今日は土岐さんの出番を軸にした巡回コースで一日を過ごす。

まずはOAのEOW。初聴。初聴とはいってもヴォーカルの森實さんのうた声はずっと以前に一度。八年ぶり、二度目。将来はちゃんとバンドを組んで、アイドル然とした対バンではなく、ロックなステージに立ちたい、ぜったいに、という強いオーラをまき散らしながら、ことば少なくギターいっぽんで弾き語る彼女の姿はいまも強く記憶に残っている。しばらくしてバンドを組んだことを知ったときは思わず笑ってしまった。うれしくて。バンド名が変わってEOWが誕生したときは、後悔した。キャンストを一度も観ていなかったから。そしてついに今日。土岐さんに次ぐお目当て。八年の歳月は長く、耳の志向も変化して、彼女らのような音楽を受け付ける体力はずいぶん衰えてしまったけれど、森實さんの活躍ぶりと生きざまの経緯を観察することは老体には良い刺激になる。静かな客席に対峙する彼女の奮闘ぶりは、当時と変わらず立派なロックンローラーだ。ステージ佳境の三曲目の完成度の高さなどはすさまじかったし、客席側の熱量を徐々に上げてくるさまは彼女がやりたがってきたライブそのものだったと思う。おそらく彼らが目指す来年の夏は、TMCではなくロッキン。

本編トップバッターはさかいゆうさん。ライブは初聴。土岐さんへの楽曲提供者でもある。小さな身体でちょこまかと忙しなく動きながらキーボードとサンプラーを操る希代のメロディ・メーカー。ひとの気を惹く話術も多彩で、懸命さをひた隠しながら失敗をカバーし、スマートな姿をちら見せしつつ専門性を強調するマジシャン。と書くと聞こえはいいが、要するに、器用貧乏なひと。好かれるけどモテないタイプ。好印象。ライブはちょっぴりスパイシーでおもしろく楽しめる。夜の土岐さんとのコラボも楽しみだ。

土岐さんは二番手で登場。目玉は邦和さんとの共演。土岐さんが事務所を通さずゲリラでライブをやれていたころ以来だから十数年ぶり。土岐さんも邦和さんもミュージシャンとしては当時とは別人に変わっていて、そのころを覚えていたリスナーなら戸惑ったかも。さっそく一曲目、邦和さんの長いソロのイントロにゾクゾクする。このあとどうなってしまうのか。以前、祖師ヶ谷大蔵のムリウイの屋上で夕陽をバックに、トキちゃんと一緒にやることはもうないだろうなあと寂しそうにおっしゃっていた邦和さんの影を思い出しながら聴く。ふたりの音はマニアックといわれればその通りだけれど、アルバムを出してツアーをするというメジャーなルーチン作業をしていた昨年までの土岐さんのライブとは違う、パーソナルな音楽性を前面に押し出す土岐さんを見られたのはうれしいかぎり。と、ここで今日の目的の半分をここで達成。充実感。

小休止したあと、次に目指したのはシュローダーヘッズのステージ。二年ぶり。聴き慣れたサウンドとメロディが平熱だった体温をぶあっと高めてくる。緊張していたカラダじゅうの筋肉が少しずつ和らいでいく感覚が気持ちいい。ドラムの音がやたらと大きく、ピアノとのバランスはずっと歪んでいたけれど、そんなやんちゃな音だって許せるステージ。しっかりと温まったところに土岐さんが登場。定食の杏仁ガールは美味し過ぎた。もう腹いっぱい。と、ここで今日の目的の四分の三を達成。あとは深夜のステージを残すのみ。

その前に。会場で出くわしたライブ仲間たちに促されて本編最後のステージを観る。彼ら曰く、見どころはネイバーズコンプレイン。彼らが大阪の路上でやっていたころからずっと観てきたというライブ仲間の提言はいつだってなんだって貴重でありがたく、そしてけっして間違わない。ネイバーズもそんなファンの声を裏切らなかった。多彩で多才。大先輩を立てるついでに自分たちも際立たせるという大技を何度もくりだしてくる。卑怯で小粋なステージ、とんでもない策士だ。たとえどんなに場所であっても自分たちの音を出せるエンタメバンド。彼らのオオトリは大正解。

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宿泊コースだったけれど、台風も去ったことだし帰ることにした。深夜とはいえ、終演後にダッシュで駅へ向かえば終電には間に合う。開演前にチェックアウトを済ませて、最上階にある会場へ。定刻通りにさかいゆうさんが登場し、しばし客席に笑いを提供したあと二曲を熱唱。芸達者ぶりは夜でも元気。長い夜になりそう。

交替して土岐さんの出番。邦和さんはいなかったけれど、昼のステージの前半部分をそっくり再現。場所が変わると音も変わるから不思議だ。最後はさかいさんが再び登場してふたりのコラボ。しめくくりにふたりの合作。これ、これよ。今日の目的はこれにて完全達成。しかし長い一日はさらに続く。

台風一過の深夜のステージ。アンコールは飛び入りでネイバーズコンプレインのOtoさんも加わって、TMCのテーマソングをインプロでセッション。おそらく本編含めて今日一番の盛り上がり。笑顔と手拍子が交錯するステージはさらにヒートアップ。そしてやっぱり長い。インプロだけにどう終わらせるか、クロージングの探り合いはしばらく続き・・・

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終わってみると予定時刻を二十分もオーバー。楽しい一日。しっかり終電を逃してしまった。