もしも自分がヒグチアイなら。
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ちゃんとやってくれるかどうかを確認しに。宇田川町。
ふだんは弾き語りばかりだから、たまにこうしてバンドで大きな音を出すと楽しくてしょうがない、というだけのガレージバンドライブ。そんな雑な音でどうやって楽しめと? というライブを過去三度も経験してきたが、さて四度目の正直となるか。
日々の経験と感情の機微を歌詞に変え、自作のメロディとアレンジで、微妙なビブラートと広いオクターブをふんだんに使って歌い、聴く者を魅了する。そんな彼女の良さを知るには、ふだんのピアノの弾き語りライブでほぼ完結できる。そこをあえてバンドで表現し、それをワンマンで披露するとなれば、聴く側としてはふだん以上のものを期待するのは自然なことだ。さらに新作リリースの直後とあっては、その世界観を裏切ることなく表出してくれると思うのも自然だ。加えて一年ぶりのバンドワンマンであれば、一年ぶんの音のレベルアップを期待するのも、耳の肥えた音楽好きのリスナーなら当然だ。つまり、歌詞に泣き、メロディに溺れ、アレンジに心が揺れ、バンドの音に酔い、聴きに来たリスナーぜんいんが一声讃歌の世界観に浸ることさえできれば、ちゃんとやってくれたと言える。逆にそのうちのひとつでも欠ければ、ちゃんとしていないことになる。
一年まえと同じだ。バンドでやるのが楽しい、そこにファンがいればなお楽しい、というだけのライブ。歌詞は聴き取れなくてもいい、楽器の音のバランスもバラバラでいい、音圧を高くしとけばなんだっていい、なんなら自分は客から見えなくてもいい。楽曲さえ入れ替えれば他はぜんぶ一年まえと同じでいい。ただひとつ違ったのはアンコール明けでグッズTを着てきたこと。自分を売るのはもういいから、ちゃんと音楽を売らないと。
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プロデューサーをクビにする。