久々のダブル・ヘッダー。まずはこちらから。
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参道をめーいっぱいに陣取る花見客をかき分けて、初めての夜桜能へ。九段北。
席は一ノ松と二ノ松の間、橋掛りにかぶりつく。そんな脇正面の席にはスピーカーの音はまったく届かないわけで、楽器の音も、演者の声も、すべてオフラインで聴こえてくる。息遣い、表情、すり足、重い衣装・・・オォ、目の前! 良席!
今日は、火入れ式、舞囃子、狂言、能、のフルスペック。ちなみに、自分なりの解釈は・・・
舞囃子はライヴ。ヴォーカルが演者、バックバンドが太鼓、小鼓、大鼓、笛。コーラスがシテ方。変拍子なのにスコアもなしにあそこまでリズムをみんなで合わせられるるなんて、凄い。中腰で少しだけ上半身を前傾させた姿勢を、あれだけ長時間維持するパワーとテクニックには脱帽するしかない。しかも途中で唄ってるし。さらにその演者の方、昭和ひとけたらしい・・・ば、化け物だ。
狂言はコメディ。セリフのリズミカルな掛け合いと、絶妙な笑いの間。野村萬斎さんのあのお顔の表情、誰にも真似できないよ。
能はミュージカル劇。あるいはオペラ。変わらないはずの能面の表情が変化する。ないものを見せる技が凄い。ストーリーを理解できればもっと楽しめるのだろうけれど、小難しい理屈はなしに、観て聴いてなにか感じるだけでも面白い。しかしあの10分弱の長ゼリフ・・・並のお芝居では見られない。
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興味が無くても日本人なら人生に一度は必ず味わうべき、と思う空間芸術。はるさめ後の寒さで凍えながらも、満開の桜の下で過ごす二時間半。来年も是非。