LUCID NOTE LUCID NOTE | Music show and Play stage reports

私を探さないで – 東京公演・初日

LUCID NOTE SHIBUYA

数年まえ、本多劇場で某公演を観終わって客席を横断するあのせまい通路でノロノロと退場列に並んでいると、真後ろでいつもとは違う異質なざわめきと尋常ではないひとだかりができていることに気づいて振り向いた瞬間、触れてはいけない高貴ななにかのためにそのひとだかりがサアっと左右に分かれて、そのあいだから小さな女性がすうっと現れた。悠然かつ颯爽と歩み出てくるその女性が小泉今日子さんだと気づいたのは、伏し目がちだけれどうっすらと笑みをたたえたお顔が目の前を通りすぎたときだった。第一印象は、顔ちっちゃ。

//

きょうはカレーフェス真っ最中の下北沢へ。北沢2丁目。

そんなふうに本多劇場の客席では思いがけず役者さんと遭遇することがあって、きわめて稀だけれど、そのときは気づかなかったけれど後になって思わぬかたちでそれを知ることもあって。え?いたんだあ、、、みたいな。

これも数年まえ、開演前の客席がまだ明るいうちに後方寄りの一般席にひとりで幕開けを待っていると、目の前の席にひと組の仲の良さそうな若いカップルが。女性のほうは座席のうえで体育座りをするくらいの小さな子で、男性の肩にもたれかかったり頬をこづいたり、公演中もやかましいくらいに青春を謳歌しているようす。男性のほうは一般的とはけっして言えない女性のその振る舞いを無視するかのように目の前の舞台に集中しているかんじ。終演後まもなくして、かれらとほぼ同時に席を立ち、退場列に並び、エントランスを出て、あの本多劇場のおもて階段を降りたのだが、その瞬間を捉えた写真をネットニュースで見たときに呆然、愕然、ひっくりかえった。女性のほうはのちに男性の奥さんになるAさん。男性のほうはそう、きょうの主役、勝地涼さん。

そんな勝地さんと小泉さんがきょうはステージのうえに。ずっと不思議な気分で観る。舞台は一度観ただけではけっして解りえない岩松さんらしい難解なセリフ回しと幕展開。ミステリーな要素もあって一瞬でも気を抜くと置いてきぼりにされそうで全神経を全集中。それでもあと十回くらい観ないと全容をつかめそうにない。つかれたあ。そんななか、期待の河合優実さんの芝居っぷりにしびれ、ひとり二役の岩松さんのコミックリリーフにいやされたジャスト二時間。見ごたえたっぷり。

//

ちなみにその写真には、まるでかれらを追いかけまわしているようなじぶんの青いデニムと黒いシューズが甘いピンでパシャっと。