当日券で行こう。
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先々週の達郎さんにつづいて、ことし二度目のNHKホールへ。きょうはハンバート ハンバートのツアーの初日。神南2丁目。
名前は知っているけれど楽曲はよく知らない、ライブで聴くのは初めてじゃないけれどほとんど思い出せないくらいの昔、という自認のもと、当日券でこっそり三階席へ。NHKホールはテレビ中継や撮影を意識したつくりで、一階席よりも上階席のほうがキャパが大きいという珍しいホール。でっかいスタジオのようなものだから音の響きも他のホールとは一線を画すらしい。クラシックのオーケストラからポップス、ジャズ、ロック、浪曲、芝居、歌舞伎等々、何にでも対応できるホールとして評判だけれど、やり方しだいで成功と失敗がはっきりと分かれる難しいホールでもあるらしい。という視点でみると、さすがに先々週の達郎さんはすばらしかったけれど、きょうのおふたりは明らかに失敗と言っていい。ボーカルの質の差なのか、PAスタッフの腕の差なのか、聴こえてくる音にこれだけの違いがあるとは。佐野さんのボーカル、リリックがぜんぜん聴き取れない。アコースティックなアレンジの楽曲でさえも高音は飛ぶし割れるし、低音はボソボソだし、レンジが小節ごとに乱高下するし、リバーブが強すぎて子音がはっきりしない、母音だけがキーンと脳内で響きつづける感じ。幸いしたのは全曲初聴、みごとにぜんぶ知らない楽曲だらけだったこと。聴こえるはずの音が聴こえないときのストレスがまったくない。ただまあ、そのぶんライブの楽しみは半減というかなんというか。きっとヘビーリスナーならたとえ聴こえてくる音が母音だけだとしても脳内で簡単に正しく歌詞に変換できちゃうんだろうなあ。
そんな小言はさておき。ライブのとっかかり。登場からさっそくしゃべりはじめる佐野さんと佐藤さん。その間およそ十分ちょい。二曲は歌える長尺なMC、軽快なコント、つかみの夫婦漫才。ハンバートハンバート、そうか、そういうライブか。歌詞が聞き取れなかったせいでMCの内容が楽曲にどうつながっているのかあるいはつながっていないのかわからなかったけれど、四コマ漫画のようなコミカルさと昭和の長屋のご近所さんのような親近感で場を緩ませる。やっと歌い始めたかと思うと一度も聴いたことがないのになぜか懐かしさを覚えるメロディとアレンジで聴かせて、そしてまたお気楽なMCへ。それを何度か繰り返しながら少しずつ確実に客席との距離を縮めていく。そしてまるで続きもののドラマのように絶妙に次への期待感を持たせたところで休憩タイム。すごいなこのふたり。
ほんのり気の抜けたほのぼのな空気感を保ちつつ、休憩明けもさっそくMCから。そろそろもういいから歌えよ!と思わせたところから、あとは一気に。おちゃらけムードから徐々にステージの様子が変わっていく。笑顔がいつのまにか真顔に、手を抜かず、地に足を、真剣に、重く、本気の音楽。このセットリストの変遷、すごい。本編さいごから四曲目と三曲目、この二曲の流れに泣けないやつはいない。その後の賑やかしの二曲はアンコールでもよかったくらい。メロディ、アレンジ、ステージング、照明、仕上り。めちゃくちゃいい。この二曲の世界観、こんどは音響の良いなかでぜひもう一度。ハンバートハンバート、おそるべし。
そしていまだにサザンのチケットが一枚もとれな。。。