その音がしたときの水谷さんが見せた一瞬の笑顔が忘れられない。
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役者が揃ったとはこういうこと。MY BROTHER IS BACK。太子堂4丁目。
客電が落ちて、水谷さんが登場した瞬間、それだけで、たったそれだけで、客席から拍手が起こる。しまった、釣られてしまった。歓声こそなかったけれど、わかる、わかるよ、その気持ち。舞台にスターが登場すると客席から幾重にも紙テープが投げこまれていたころの昭和なステージのはじまり。
キャストぜんいんが主役級。やもすると「我こそは」となりそうな顔ぶれなのだが、そんな気配はいっさいなく、みんながみんな本領を発揮して、みんながみんな奥の手を見せつつ、みんながみんなこどものように楽しみながらひとつの舞台を作り上げているのが手に取るように伝わってくる舞台。音楽ライブのように演者が楽しんでいると観ているこっちもノリがよくなるし、スポーツ競技のように一丸となった演者を観ているとこっちも俄然応援に力が入る、そんな客席と演者さんとの見えない駆け引きと掛け合いがますますステージに磨きをかけていく。オーラス以外は劇伴はいっさいなく、セリフだけで進むストレート・プレイ。にもかかわらず会場ぜんたいで湧き上がるこの一体感。これはたまんない。トップクラスの役者さんたちだからこそ成せるワザ。これ、再演しないかな。
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カーテンコールで見せた水谷さんの一瞬の涙もろさ忘れられない。水谷さんを泣かせた今日のお客さんはほんとにいいお客さん。