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Hiromi The Piano Quintet Japan Tour 2021 “SILVER LINING SUITE” – Final Day

LUCID NOTE SHIBUYA

楽器の数はたったの五つなのだが、届いてきた情報量が多過ぎてなにがなにやら。

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今日は上原さんの日本ツアーの最終日へ。今月三度目のオーチャード。道玄坂2丁目。

短い主旋律のあと、長いインプロのソロ回しを聴かせて、最後に再び主旋律で締める、というジャズなスタンダードとは違い、全編にわたってすべてが聴きどころ、というクラシカルに仕上げられた楽曲群。というと、ライブのプログラムもクラシックにありがちな、前半に小品をちりばめて、後半の佳境に大作をじっくりと聴かせるような構成かと思いきや。オープニングで強烈なジャブな一曲を終えた直後に、全尺四十分、公演時間のおよそ半分を使って四つの楽章からなる例の超大作な組曲をぶちこんできた。スタミナ温存なんて上品な考えは、彼らには端からないらしい。で、たいていの人はそこで気づくんだ。今回の主役はピアノじゃないってことを。

昨年末のあのブルーノート公演を初演だとするなら、今日の彼らの音は、丸々一年をかけてじっくりと煮詰め、練り上げ、仕上げられた極上のアンサンブル、ということになる。ピアノの音とストリングスの音は相互に微妙な距離を保ちながら、複雑な関係性で絡み合っていて、いつものように上原さんの音だけに注目しても上手く聴き取れないように仕組まれていた。ジャズな即興シーンもあったけれど、なるほど一流のクラシック奏者の即興演奏は、即興とは思えないくらいに計算高く、香り高く、気高く、そしてかっこよかった。全般的にアグレッシブな演奏に聴こえたのは上原さんの所為か、それとも彼らの本性か。

アンコール後のスピーチで、八日の中さん、昨日のビルマンさん、今日の西江さんのぜんいんが上原さんのひととなりを褒めちぎっていた。いい音楽は人格の上にこそ成り立つ、のであれば、凄腕の彼らも間違いなく人格者だ。またやらないかな、このアンサンブル、このメンバーで。

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この一年間で、このブログへの登場回数は第二位、費やしたお金の総額は第三位の上原さん。たいへんお世話になりました。が、これで終わりじゃないのが今年の上原さん。