またしても月見ルの名ブッキング。十七年間、伝説をつくり続けるハコ。
//
今日はサリュさんのワンマン。南青山4丁目。
ずいぶんともったいぶったオープニング。細海さんと名越さんが演奏を始めても主役がなかなかステージに出てこない。もしかして派手にドドーンと登場するパターンかと思いきや、こっそりと下手の袖からやっと顔を出したかと思えば、うつむき加減にいそいそとステージの中央へ移動して、用意されたスツールに少しだけ気だるく腰をかけ、しばらくイントロをうつろに聞き流し、やっと声を聴かせてくれたのはその数分後。しかもその一曲目のほとんどがスキャット&コーラス。アーアーとかウーウーとか。やばい、ねむい、だるい、かったるい、悪酔いしそう。そう、今日のタイトルはサイケデリック。サリュさんもどうやら本気だ。
とはいえ、終わってみると今日の主役は細海さんだった。サリュさんのボーカルは音の構成要素のひとつでしかなく、彼の音がないとまったく手に負えない仕上がりのライブ感。前半はダウナー系のアレンジで重く大きく空間を歪めてきた。MCをはさんで、後半のはじまりはアコーディオンとアコギの音で情緒不安定に。佳境に入ってやっと耳障りのいいキックな拍打ちを加えて硬く果敢に攻めてきた。三つの大きな音の波で聴くものを催眠し、陶酔させ、覚醒させる。すごい技術。やるな、細海さん。
//
ローカルで小さなライブハウスのブッキングライブに、グローバルでメジャーなミュージシャンがここまでしっかりと作り込んでくるとは思いもしなかった。ボーカルを前面に出したアコースティックなサリュさんの生々しいライブも楽しいけれど、今日のようなテクニカルでプロフェッショナルなライブもいいな。月見ルの企画力と熱意に感謝。