LUCID NOTE LUCID NOTE | Music show reports and Play stage reports

友達 – 東京公演・初日

LUCID NOTE SHIBUYA

ファンタジーだと割り切って観るならコメディ。現実世界に当てはめながら観てしまうとトラジディ。

//

友達の初日へ。本町1丁目。

現実社会にはびこる様々な問題を豊富に取り揃えて、観るものをなんども困らせるテンコ盛りなストーリー。キャストは、芝居のスタイルを確立されている山崎さん、遣都さん、鈴木浩介さん、肝心な役どころもこなせる有村さん、鷲尾さん、緑子さん。トップクラスの役者さんを多数起用した贅沢づくしなステージ。

ただし上演時間はたったの九十分間。テーマを深堀して悩んだり、ディティールや伏線にこだわったり、好きな役者さんをじっくりと眺めたり、という楽しみ方はまったくできない。扱うテーマの数々はぜんぶが臭わせ程度でうすっぺらく、ひとりひとりの役者さんの本領も魅力も味わえず、結果的にぜんぶが上っ面で薄い後味に。これはこれでリアルなトラジディ。あと三十分くらいあるとなあ。たぶんぜんぶコロナのせい。

//

ラストのシークエンスは激しい痛みを伴ってもよいはずなのだが、それさえも滑稽なものに見えてしまうひとは、きっと実社会でも幸せの真っ只中にいるひと。山崎さんがセリフを言うたびに、肩を上下に小刻みに震わしていた前席のおばちゃんは最後までファンタジーのなかにいたようだが、その隣席のおじちゃんはなんでこれで笑えるのかと終演後にそのおばちゃんに問い詰めていた。演劇っておもしろいな。