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平井真美子ピアノコンサート「ikoi」東京公演[夜の部]

LUCID NOTE SHIBUYA

新婚さん!

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約一年ぶりの平井さんのライブへ。等々力2丁目。

平井さんの入籍をニュースで知ったとき、やった!でかしたっ!という気持ちと同時に、もしかするとしばらくライブはないんじゃないか?という懸念も沸いたのだが、どうやら杞憂だったようだ。ライフワークのピアノダイアリーの更新はなかったものの、そのぶんビジネスワークのポートフォリオが拡充されていた。きっと彼女はワーカホリック。

さすがにテレビも映画も観ない生活を長く続けているとそっち系の情報はさっぱりで、劇伴といえば舞台演劇、サントラといえば旧い洋画の有名どころのフレーズぐらいしか思い出せないのだが、平井さんの奏でる劇伴は、劇伴の枠をとっくに超えていて、ライブで聴いてもストレスなく耳に入り、しっかり心を揺さぶってくる。ピアノダイアリーは彼女の分身のような音楽であり、ライブで聴くと、彼女だけが見えている彼女の世界と同期しながら楽しめるという優れた機能を持っている。一方の劇伴やコマーシャルソングは、発注者の意向や希望などを栄養にしつつ、デッドラインのあるなかで作られた音楽であり、ライブで聴くと、目に見えてくるのはいつだって彼女の世界とは別の世界に意識を運んでくれる。今日のように、制作時の苦労、仕上げるまでのプロセス、早産曲と難産曲の違い、スコアの書きぶりの工夫、発注者とのディスカッションの内容など、リスナーには想像もできない、作り手だからこそ話せるエピソードの数々を聞かされると、その曲が持つ立場や重要性が際立って見えてくるから不思議だ。楽譜は手紙、というフレーズは平井さんらしい表現。もらった人はうれしいだろうな。

こうして書いてみると、ビジネスライクな硬いライブだったようにも思えるのだが、今回の「ikoi」は、客席とインタラクティブに楽しめる要素も持たせたいようだった。ピアノダイアリーとは一味違うプロジェクト。続くといいな。

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今日の会場の「Fluss(フルス)」。生の杉板で床張り。壁面は白。天はコンクリ。空調が弱点。これだと梅雨どきや真夏のライブはキツイかも。ピアノの音はしっかりとした硬め。