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宮本笑里「classique」アルバムリリースツアー(東京公演)

LUCID NOTE SHIBUYA

あのころと何が変わったかって、掲示板が電子化されたこと。

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宮本笑里さんがブルーローズに凱旋。赤坂1丁目。

彼女の今回のツアーは、自前のリサイタルではなく、新しいアルバムの楽曲を軸に構成したライブで、いわゆるリリパ。このブログの今年1月の晴海公演の記事を読み返すとかなり辛辣な書きぶりなのだが、今日はその希望の半分くらいをかなえてくれた。やはり彼女の原点はクラシックにあり、ブルーローズにあった。

ファーストセットでは、純白のノースリーブのサマードレス、オレンジピンクのペティキュアに厚底のサンダルをひっかけて登場した宮本さん。ひだり斜めに構えて演奏するバヨリニストが多いなか、今日の彼女はあのころと同じように、正面を向いて見栄を張り、客席と対話するように演奏していた。この「帰ってきた感」、デビューリサイタルを覚えているひとならわかるはず。

作曲者の紹介や曲の歴史や事実関係を紹介するMCは、早口になるほど流暢で自信たっぷりに話すのだが、いざ自分自身のこととなると、とたんに歯切れが悪くなる。今回のセットリストは小品ばかりをかき集めた構成で、大作ものはなかったのだが、それについてセカンドセットのいいタイミングで相棒の佐藤さんが彼女に質問をしてくれた。なぜ小品ばかりなのか。「誰もが知っているってことはとても大事」。いやまあ、そうなんだろうけどさ、そこはごまかさずにもうちょっとちゃんと深堀りして話そうよ。

小品ばかりの構成は、ライブぜんたいを見渡したとき、感情の起伏も穏やかになる。小刻みに曲が入れ替わるので、感情の継続性を保てず、一曲ごとに気持ちをリセットし、すべて一からやり直しになる。クラシックライブのあの独得なジワジワと迫り高ぶる緊張感は、大作でしか生まれてこないのだろうか。今日はもっとも長い曲でもセカンドセット最後のツィゴイネルワイゼンの約9分。10周年の次を見据えたなかでの今日のライブは、まだまだリハビリの途中なのか、練習曲をずっと聴かされた感じで終わってしまった。

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年明けのリサイタルツアーの選曲ではバヨリンソナタも検討中だそうだ。練習期間はあと4か月。期待していいのかな。