代官山でのランチライブを通常通りに楽しんだあとは、元渋谷ピカデリーへ。
//
メジャーデビューを控えた番匠谷さんの東京での初ワンマンライブ。道玄坂2丁目。
今日のプレプレは、1階席の後方3列の全席と2階席の全席に、白地に黒色の文字を印刷した半ピラが貼られていた。彼女がつくった音楽を、彼女の手から一般消費者の手へと流通させるためには絶対に欠かせないひとたちのために用意された席だ。こういう席がこれだけ多く用意されている場合、コンベンションを兼ねている、と思うことにしている。これらの席の後ろのスペースには撮影用のカメラが固定され、客席最前列とステージのあいだには手持ちカメラの撮影班が陣取っていた。ステージの上に目をやると、ギター、キーボード、ドラムス、ベースがあり、サポートメンバーを集める伝手などないはずの、上京してほんの3か月の18歳の女子のライブにしては豪華なサポート陣をそろえているように見えた。すでに、彼女が歌う「大人」という生きものたちの手によって、彼女の意思とスピード感とは別の次元で、デビューのための準備が着々と進められているようだ。
番匠谷さんのウワサは、2年前からライブ仲間から聞かされていた。大阪にすごいシンガー(になれるかもしれない)の女子高生を見つけた。大阪まで聴きに行っている(東京から)。君も一度は大阪に聴きに行くといい、と彼には会うたびに薦められていた。結局大阪へ行くことはなかったが、先月やっと機会を得て聴くことができた。青山と渋谷で、二度。したがって今日は三度目の試聴ということになる。
客電が落ち、本人に先立ってサポートメンバーが登場し、ステージ上の決められた位置で楽器の準備を始めた彼らのなかに、見慣れた顔が3人もいることを確認した。サポート陣は間違いのないメンバー、という安心感は、ライブを楽しむための要素としてこのあと充分に機能した。だれが集めたんだろう、このメンバー。
セットリストは、新人のシンガーソングライターにしてはふり幅が広かった。手持ちの楽曲が少ない新人は、たいていの場合、同じような楽曲を同じようなアレンジで同じように歌う。今日の番匠谷さんも、あらかじめ決められたコンセプトをもとにして作った楽曲群というものはまだないようで、シングルカットを寄せ集めたパッチワークのようなセットリストだったが、アレンジを工夫することでライブの起承転結をしっかりと作り込んでいた。ハードなロック、ガーリーなポップス、古き良きフォーク、ラップ風味のリズムアンドブルース、泣きのアコースティック、王道のポップス、なんでもござれだ。ヴォーカルも、別の生きもののように生き生きとしていた。青山で初めて聴いたときも感じた深い情熱、生きていくための強さ、必要とされる愛情、人への畏敬の重要性、惜しみない勇気、積極的な直観、ありのままの直進性。あのとき俊美さんも絶賛してたが、これが18歳とは・・・。
ただし、時間と経験が解決してくれることだから重要性は低いが、MCは決して女子ウケしそうにない女子のあざとさがあり、ギターは素人の耳でもその良し悪しがわかるくらいに益々の鍛錬が必要そうだった。今後も彼女のライブに行くかと聞かれたなら、ギターが上手くなったら、と答えることにしよう。上手くなったかどうかは、行って聴いてみないとわからないけれど。
//
新人がデビューするたびにメディアが使う「期待の新人」というフレーズは、誰だか知らないけど多くの人が期待している、だからすごい新人なんだと、リスナーの心理にきわめて巧妙に刷り込むための、大人たちが便利に使うフレーズだが、この場合の期待の新人とは、関係者が期待している新人、と理解するのが正解。