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HIROMI JAPAN TOUR 2019 “SPECTRUM” – Day17

LUCID NOTE SHIBUYA

近過ぎるとよくないときもある。

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上原さんの今年のツアー17日目へ。赤坂1丁目。

発券を今日までズルズルと先延ばしにしていたチケットを、溜池山王の駅地下のファミマで慌てて入手して、そのままその足でアークヒルズへ。開演間際のサントリーホールのエントランスで半券をもぎってもらったあと、ようやく席番を確認するという怠惰でミーハーなファンにとっては、辿り着いたその先はパラダイスだった。たとえにわかファンでも、何度か足を運んでいればこういうことに出くわすのだ。いやびっくりだ。ところが彼女が登場し、客席に向かって丁寧に一礼をしたあと、ピアノの椅子にゆっくりと腰をおろし、鍵盤に右手の指をのせたそのとき、だからといってすべてが良いわけではないことを思い知る。

遮るものもなく、だれかに邪魔される心配もない状況において、音と映像がダイレクトに耳と目に入ってきたとき、優先されるのは常に映像だ。上原さんがアクションを起こさないかぎりピアノは音を出せないから、どうしても音よりも彼女の動作に気を取られてしまう。そして演奏中の彼女はとても多動だ。音を聴く間もなく次のアクションを起こしてくれるから、常に動作を気にする必要がある。いまだって思い出せるのは、彼女の右の肘から指先までの、しなやかに緊張する前腕筋、常に浮き出た静脈、弓のようにしなる手首、まばたきよりも速く連打する指先、それに応える白鍵と黒鍵。あるいは彼女の脚先。ステップとキックを繰り返すスニーカー、たまにペダル。弾きながら立ち上がり、また座るときのふくらはぎの膨らみ。あるいは顔の表情。真剣なとき、和らいだとき、うまくいったとき、うまくいかなかったとき。だから思い出せないのだ。そのとき、どんな音だった?

LUCID NOTE SHIBUYA

それでもやっぱりここはパラダイス。