日本でジャン・レノさんといえばおそらく「レオン」なんだろうけれど、かれとの最初の出会いが「グラン・ブルー」だったひとは、きっといまでもかれの名を聞くとエンゾが最初に頭に浮かぶはず。
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きょうはジャン・レノさんのワールドツアーの初日、シアターウエストへ。西池袋1丁目。
全編字幕付き。言語の壁は厚く、高かった。文字を読みながら、セリフを聞きながら、演奏を聴きながら、表情しぐさを観察しながら、スクリーンにさえも目を配る。ひと文字も読み飛ばさないようにと字幕にばかり注意を払っていると、せっかくのデ・ニーロの声模写を聞き逃すことになる。耳も目も脳もフル稼働。でもけっして疲れない、興味津々の一時間四十分。
フランス語の聞き取りが得意なひとと、日本語の字幕に頼らざるを得ないひととでは、ジャンさんのセリフへの反応のタイミングがことごとく違う。どよめきや笑いのタイミングが早かったり遅かったり。もしかするとアドリブもあったのかもしれないとか、野暮ったいけどフランス語ならじつは粋なセリフなのかもとか、聞き取れないことにたいしていちいち絶望してしまうのだが、ジャンさんご本人もスペインから仏語、伊語、さらには米語まで、ずいぶんとご苦労されたことを知ると、この程度で悶々とするじぶんが恥ずかしく感じてきたりもして。
仕事と私生活との力学は国籍・職業・性別にかかわらずいつの世も複雑で、ジャンさんもそれにずっと悩まされてきたらしい。でもその結果が、世界的な名声と、三度の結婚と、六人のこども。その原動力が何だったのかはいまひとつ解らなかったけれど、結果だけをみるとぜんぜん「らくだ」じゃないよ。むしろライオンとかトラとか。すごい。だっていまの日本人なら、未婚、子なし、定職なし、がデフォルトだもんなあ。
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MASTERキートンのチャーリー・チャップマンを描いた浦沢さんもきっとエンゾのファンだと思う。グラン・ブルーをカルト映画と訳すことには断固として抵抗したい。