これが実話なら小津さんは中井さんのゴッドファーザー。
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きょうはパルコ劇場、先生の背中の初日へ。宇田川町。
この二時間半の感想を簡潔にまとめるなら、小津監督ってろくでもねえなあ、だ。これを美談に変換できたのは、その時代を生きてきたその界隈のひとたちと、それらを許してきた古い客たちのおかげだ。いい時代だったと思うか、とんでもないと思うかは観る人にゆだねる、そんな余白があればなお良かった。ぜんぶを美しくされても、ねえ。
そんな感想の原因のひとつは、キャストの世代にある。芳根さんや藤谷さんあたりの世代はこれを許せるんだろうか、と思いながら観てしまうと、かれらの芝居がまるっきり嘘に見えてくる。無理してないかとか、土居さんや柚希さんの世代はぎりぎりかもとか、緑子さんや升さんなら全許容だろうなとか。中井さんは当事者だけれど、もしもいまそんな監督がいるとき、かれは許せるのかなとか。こんなふうに、頭では理解できても心では許せない、それが芝居に出ている、と観えてしまったわけだ。それもこれもいまだに腐った連中がいるからっていうのもあるかもしれないし、演出が行定さんだってこともあるかもしれない。だって同業者でしょ。悪くは描かないだろうし、描けないだろうし。
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どうして役名に実名を堂々と使わなかったんだろう。使えなかったのかな。