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TMC week 2020 ~TOKYO MUSIC CRUISE Spin-Off~ – Day3

LUCID NOTE SHIBUYA

声を出せないストレス。

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TMCへ初参加。砧のスタジオとは別もの。芝公園4丁目。

半年ぶりの土岐さんのライブ。新しいなにかを期待していたはずなのに、久しぶりな感触(既視感)を思い出しながら半年前を振り返る、という過ごしかたをしてしまった。バンドメンバーも半年前とまったく同じ面々だったし、唯一の新曲もトオミさん(またもや)との合作だったし。たかが半年されど半年。ライブを生で配信するという手法を取り入れて、そこで新しいなにかを見つけたいとおっしゃっていたけれど、配信そのものは以前からあったし、リスナーにとってはけっして新しくない手法だ。いまの配信ムーブメントに対して、いまはそれしかないから、というネガティブな印象をもつのがヘビーリスナー。いやいや配信はありがたい、というポジティブな印象をもつのがライトリスナー。そんな既成概念をひっくり返すような新しいなにかをぜひ見つけて提供してほしい。シンガーとしての土岐さんは歌って聴かせる場所としてきちんと機能するならば、実はライブも配信も同じなのかもしれないけれど。新しいなにかを見つけなければならないのはむしろ、演者さんを使って稼ごうとしている人たちなんだろうな。

田島さんはライブは初聴。座高をずいぶんと低くセットしたスツールに、ひとりギターを抱えて座骨をひっかけるようにして腰かける。左手はネック、右手にピック、左足がハイハット、右足でキックという、見た目は決してスマートとは言えないスタイルで、ギターをかきむしり、リズムを踏み鳴らし、独特で癖のあるあのヴォーカルで、なりふり構わず歌いあげる。掛け声も声援もできない客席のストレスを一身で受け止めて、うたと演奏で煽り返し、さらに客にストレスをため込ませる。声出したいだろ、そうだよ、これがライブなんだよと、心で客席と確認し合い叫び合う。客席とステージとの声なきコミュニケーション。すごいな。おいしいところぜんぶ持っていきやがった。

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TMCは今年で6回目。土岐さんも出演していながら一度も来たことがなかった理由はいたって簡単。チケット代がべらぼうに高いから。そしてその判断は間違っていなかった。どれだけ良い機材を揃えていたとしても、どれだけ熟練錬磨のPAさんだったとしても、エレガントでおとな向けの良質で、料金に見合う音は、聴こえてこなかった。