いい音で聴く。
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土岐さんの今年のライブ初めは広島クアトロ。PBツアーの四日目。本通。
広島のクアトロは三度目。ここのステージ高は1メートル以上あり、スタンディングにはうってつけのライブハウスだ。PA卓はフロアの最後方にあり、その後ろにステージとおよそ同じ高さで二階フロアがある。二階はカウンターテーブルにスツールが用意されているが、奥行きがあってスタンディングも可能だ。さらに二階フロアの後ろには数段高く二階と同じつくりの三階フロアある。過去二回、若い整理番号だったおかげで(今日の土岐さん曰く「アリーナ席」)の前寄りの席で楽しんでいたのだが、今回はどうしてもいい音で聴きたくなって、二階のカウンタテーブルに陣取ってみた。PA卓の真うしろだから、音はきっといいはずだ。当然、初っ端から仰け反った。ツアーも4ステージ目。これまで聴こえなかった音が聴こえる。なかには聴きたくなかった音もあったのだが、おそれくこれが、音の作り手が聴き手に対して聴かせたかった音なのだ。聴こえる音が違うと同じセットリストでもライブぜんたいの印象はまるで違ってくるから不思議だ。ライブはいい音に限るね。
もちろん今日は見えかたも違う。ステージを間近で見るのと俯瞰するのとでは、見逃すアイテムの数に大きな差がある。俯瞰すると、誰がどんな音を出しているのか、あるいはその音を誰が出したのかを正確に知ることができる。音の出し手がわかると、音に没入するタイミングは少し遅れるが、感度はより深くなる。音の出し手がわからないままだと、目に見えるものを優先しがちで、そのうち音への集中力が弱まって、音の出し手が提案するここという肝心なタイミングをうまくつかめなくなる。土岐さんのように動きが小さく、提案のタイミングもあいまいで、曲によって客との距離感を変化させ、予定調和を基礎にしないステージングだと、なおさらフロア前方は重い腰を上げるタイミングがつかみづらい。だからといって盛り上がってないわけではけっしてないから、まさにフロアはタイトル通り、「冷静寄りの情熱」状態。見かたを変えたら、四日目にして少しだけ答えが見えてきた。このツアー、そうとうおもしろいぞ。
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問題は同期。