LUCID NOTE LUCID NOTE | Music show reports and Play stage reports

Sunday Night Sessions

LUCID NOTE SHIBUYA

澤田さんのママの拍手は16ビート。

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人生二度目のホーカスポーカスへ。澤田さんと酒井さんのツーマン。平河町2丁目。

先攻の酒井さんは初聴。最後までつかめなかった。ジャズとして聴くと散々な結果が耳に残る。ジャズヴォーカル特有の深みや優しさはそこにはない。R&Bとして聴くと耳になにも残らない。広がりも奥行きもレンジ不足だ。ましてやポップの軽快さやヒップホップの軽妙さもまるで感じない。したがってジャンルを判別することは、彼女に対しては無意味だし時間の無駄だ。さらに、ドーナツ屋は彼女の声には味も脇も甘すぎた。彼女の音楽にマッチする空間を探すなら、どんなものでも融合させる器量と力技が集まる場所。六本木とか銀座とか。上野や秋葉原でもいい。ただしまちがっても渋谷じゃない。ましてや永田町なんて柄じゃない。などと思いながら聴く。酒井さんの音楽、おもしろい。

後攻が澤田さん。月曜日の代官山はバンドだったが、今日はエレピの弾き語り。この九か月間の成果をとくと聴きやがれ、と言わんばかりのセットは1曲を除いてすべて新曲で、歌いたい、聴いてほしい、という衝動にかられて選んだ楽曲たちだそうだ。日本のメジャーで音楽をつくっていたころは、プロの演奏者、レーベルの制作者、プロモーションの担当者、あるいはライブのリスナーも含めて、多くの人たちによってつくったものを評価され、その評価によって音楽が変化し成長していくという環境が整っていたが、今のロスの生活は外野から意見をもらい評価される環境ではないそうだ。したがって今日のセットは、だれにも何も言われずに自分がやりたいことをひたすらやれる環境のなかでつくられ、だれの意見も評価も反映されていないままのピュアな楽曲群、ということになる。月曜日の彼女のライブで感じたモノ足りなさの要因は、おそらくこれだ。そのなかでも目新しさがひとつだけ。本人が意識して取り入れたのか、ロスの環境が自然とそうさせたのかは不明だが、たしかにそれは新しかった。なぜこれを月曜日のバンドでやらなかったのかは謎だが、澤田さんのラップは、嫌味のない聴きやすさが特徴らしい。

訊いたところによると、彼女はロスの生活の一年の延長を決めたそうだ。ならばぜひそのあいだに、本場でもライブをやってほしい。彼女の音楽に対してロスのリスナーがどんな意見と評価を持つのか、それによって彼女がどう変わっていくのか、あるいは変わらないのか、日本のリスナーとしては興味と期待でいっぱいだ。なんなら行ってもいいぞ。

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ただし、ここのドーナッツは口に合わない。