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Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019 DISCOVER WORLD THEATRE vol.6 ハムレット(初日)

LUCID NOTE SHIBUYA

今日のコクーンの男子トイレはとてもスムース。

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客席の女子率はざっと見た目で98.5%。そんななかで黒木華さんの姿を拝みにハムレットの初日へ。肩身の狭い前方席。道玄坂2丁目。

芝居を観るときは相変わらず、目当ての役者さんの情報以外は幕が上がるまで目に入れないようにしている。あらすじも演出も、場合によっては配役さえもチェックせずに、予想や期待、先入観をなるべく持たずに楽しむという観劇方法は、今日のようにいつだって胸熱で成功する。

ハムレットのあらすじは結末を含めて既知するところであり、したがって問題は生きるべきか死ぬべきかではなく、いちばんおいしい役どころのフォーティンブラスを誰が演じるかだった。最後の最後にあの玉座にゆっくりと腰を落としたのは、村上虹郎さん(初見)。今回の演出ではちょい役だったにもかからず、あの堂々とした存在感とぶれのない目力で、まさにおいしいところをさーっとさらっていった。佇まいも、醸し出す雰囲気も、エンジ色のつなぎの衣装も、必要にして最小限のセリフも、すべてがかっこよすぎた。この若手、やるな。

ハムレット役の岡田将生さん(初見)は、ほぼすべてのシークエンスに登場し、ずっと滑舌よくしゃべりっぱなしだった。勢いだけで観客を圧しに圧す、という演出だけでも充分に感動できるのだが、彼はあの圧倒的な演技力でオールスタンディングのカーテンコールを四回も導き出した。彼もすごい。

エロティシズム全開の松雪泰子さんも、いつもどおりのコミカルな山崎一さんも、いったい何役をこなしたのか今でもわからない技巧派の冨岡弘さんも、もったいないくらいに出番の少なかった秋本奈緒美さんも、役者としてのイメージをそのまま活かした役づくりと演出で、観るものに安心感を与えていた。

で、黒木さんなのだが、どれだけ贔屓目に観ても、これがどうも影も印象も薄く、いまも記憶があいまいだ。準主役のはずなのだが、あまりにあっさりとしたまま出番を終えてしまった感は否めない。他の役者さんの演出が濃過ぎたというのもあるのかもしれないが、客は女性ばかりのはず、という事前の予測をもとにこういうオフィーリアを演出をされたのであれば、それはそれでザンネン。

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少なくとも終演後の客席の様子を見るかぎりは、とにもかくにも初日は大成功だったと言っていい。しかしやっぱり黒木ファンとしてはストレス残るなあ。