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KANA HANAZAWA Concert 2019 Birthday Special -2019/02/25-

LUCID NOTE SHIBUYA

すんごいメンバーが集まると聞いて東京ドームを横目にしてTDCホールへ。

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金に糸目を付けないとはまさにこのこと。後楽1丁目。

この手のシンガーさんのライブは選択肢にないし、会場もすっかりアウェイな場所でもあるし、優先順位は際限なくマイナスを超えるのだが、今日だけはじっと我慢。

今月リリースされた通算5枚目のアルバムの発売記念も兼ねた花澤香菜さんのバースデイ・ライブ。今日で30歳だそうだ。彼女にとっては、30歳という響きは特別なものであり、その特別なタイミングで発売するアルバムも特別なものにしたかったのか、音楽を知るひとならだれもが「金かけてるなあ」と思う方々ばかりがクレジットされたアルバムのタイトルは「ココベース」。とりたてて新しい音楽を提案しているわけでもなく、特徴的で具体的なコンセプトも見当たらない。ただただ有名どころのクリエイターたちを網羅した、という贅沢で我儘なマスターベーション的なアルバムだ。

アルバムに金をかけたのだから、ならばライブにも全力で投入しようということだったのか、日本の代表的なミュージシャンが集まる大型フェスのハウスバンド並みの豪華メンバーがずらり。すごい。しかも、かん口令でもあったのか、メンバーのだれひとり今日のスケジュールを公表せず、彼女のサイトにもバンドメンバーの紹介は見当たらないというシークレット・バンド。佐橋さん、有太さん、富雄さん、権藤さん、そして結ちゃん。ドリームチーム!・・・ありえん。

とはいえ、その演奏がリスナーにとって特別なものになるとは限らない。むしろ普通。通常運転。彼女が持つシンガーとしての力量に合わせて、ファンが持つ彼女のイメージの範囲を超えない程度に、TDCホールのポテンシャルを伺いつつ、すべてがバランスよく進むように注意深く、ライブでの彼女のファンは彼女の一挙手一投足だけを注視しがち、という客席の傾向を踏まえたうえでの、通常運転。とりたててテクニカルなソロ回しがあるわけでもなく、トリッキーなリズムアレンジがあるわけでもなく、だからこそファンは彼女の声だけに耳を傾けることができるし、間違えることを恐れずにペンライトを思い切り振りまわせる。だったらオケでいいじゃん、と思うひともいるかもれないが、そこはそれ、今日は彼女の30歳の誕生日なのだ。バースデイ・ソングをこのメンバーに演奏してもらえるとは、羨ましすぎる。

彼女のこの人気はどこにあるのか、ファンは彼女のどこに惚れているのか、なかなかつかめなかったのだが、アルバムの制作時の秘話を佐橋さんと話しているときの彼女を見てわかった気がした。彼女は音楽、とくに邦楽が好きだ。ただ好きってだけじゃない。客席そっちのけでしゃべりすぎるし、ある部分については詳しすぎる。間違いない、あれはオタクだ。彼女が放ったこの匂い、客席に充満する香りとまったく同じ。

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一方、彼女のマネージャーさんは洋楽にめっぽう詳しいらしい。たぶんマネージャーさんはこっちに行きたかったんじゃないかなあ。

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