ノートブックのサイズの役割。
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1年半ぶりに里花さんのライブへ。代官山町。
ハレマメの上手のふすまをそっと開け、厳かに登場した里花さん。譜面台の上に静かに開かれたこのノートブックは、前回のライブでも使われていた。
里花さんの譜面はA5サイズ。今日の譜面台は、ミュージシャンにもっともよく使われている見開きでA3サイズの譜面に対応するタイプだから、ひとまわり小さいA5の譜面は、逆に目に付いてしまうくらいに小さく見えた。スコアは、五線紙ではなく歌詞にギターコードを付しただけのコード譜で、それをクリアファイルに二枚背合わせにして差し入れ、6穴のリフィル式のノートブックにファイルされていた。
ノートブックの表紙は、天然の皮革だ。閉じたあとに開かないように留めるフックの役割を持つリボンは、表紙と同じ皮革が使われていて、フックとしては極端に長く、留め紐としては幅が太かった。リフィルの穴に通すリングはA5サイズのシステム手帳の規格と同じで、リングの直径のサイズがノートブックの厚みを決定していた。ライブで使用するスコアファイルとしては厚みがあり、この厚みの限界まで譜面をリフィルして、それを全曲演奏していたなら、、間違いなく今日のライブはまだ終わっていない。
このノートブック、里花さんと里花さんの友人が共同作業で仕上げた手作りのノートブックだった。共同といっても、設計を里花さん、手を動かしたのは友人、という共同だ。A4サイズではなく、ひとまわり小さいA5サイズを採用した理由は、「お客さんは私の顔も見たいだろうなあ・・・と思って」。
自分の使い勝手にお客さんへの想いを加えて手作りで仕上げたノートブックは、ライブにおいてもっとも最適なサイズと温度で、その役割を果たしていた。今日の里花さんは、八ヶ岳の凛とした空気、山々の凄味、樹々と水のささやき、空と雲のコンビネーション、ほのかな星々のゆらめきなどを背景に、山での生活、人の不条理、家族への愛、亡き人への思いなどを、遠くまで届く澄んだ歌ごえとフォーキーなギターサウンドのそばにノートブックの手作りのあたたかさを添えて、想い通りに歌っていた。
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里花さんには、こういうことをこともなげにやってのける友人がたくさんいるらしい。ちなみに、里花さんが手作りのお礼にと友人に手渡したのは、「自分のCD」だそうだ。このノートブック、欲しいな。こういう友人、欲しいな。