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Piano Diary Concert 2018

LUCID NOTE SHIBUYA

ライブで遠征する場合、たいていは宿泊込みで日程を考えるのだが、行き先が京都となると話はまったく変わってくる。いまの京都の宿泊事情では、交通費をプラスしても名古屋あたりで宿を取ったほうが安上がりなのだ。とはいえ、安いという理由だけでたいした用もなく名古屋に泊まるくらいなら、フィジカルな負担は大きいが、弾丸で渋谷に帰るプランのほうがメンタルには健全。ということで、年度末の最終日に渋谷から京都へ日帰りブーメラン・ツアー。

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平井さんの今年のピアノ・ダイアリー・コンサートへ。三条高倉。

時間早めに会場に着くと、シャイニングガールが迎えてくれた。会場は、防音とは無縁の木枠にはめ込んだガラスの仕切りでぐるりを囲んであり、その木枠も天井まで届いていないので、音は遮断されずにホールの建物ぜんたいに響き渡っていた。リハーサルも大詰めだった。

ピアノで日記を書くという平井さんのライフワークなライブ。毎年少しずつ更新される日記は、厚みも少しずつ増してきているようだった。日記はとてもきれいな字と美しい文体で綴られていて、何度も読み返したくなる。内容は、なにげない日常のエッセイや、空想のファンタジー、家族との思い出やエピソード、ふと見たものや日ごろ感じたものなどの感想などが書かれていて、読み終えたときは、人生のすべての日をこんなふうに過ごせたなら、死ぬときも怖くないだろうなと思わせるくらいの多幸感に包まれる。現実を振り返ると、そんなにきれいな人生を送っているわけでもないし、自慢できる生活を送っているわけでもない。不安だらけで、薄汚れていて、なるべくドブに落っこちないように下ばかりを見ているような日々の連続で、彼女の曲がBGMとして当てはまりそうなシーンはいっさいない。でも彼女の音楽を聴いてるときだけは、自分がとてもきれいな人間で、高価でパリッとした箔のついた気分になれる。不思議なもんだ。京都の春はなかなかの上機嫌だ。

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でもね、渋谷の春も捨てがたいんだよ。街も人もそれほどきれいじゃないけどさ。